トスカ
FEB 2026 | ||||||
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トスカ – ジャコモ・プッチーニ
上演時間:3時間(休憩2回を含む)
言語:イタリア語
字幕:ハンガリー語、英語、イタリア語
プッチーニの『トスカ』で重要なのは、舞台がローマであり、1800年の夏であるということではありません。作品を魅力的にしているのは、登場人物たちの葛藤、感情、そして衝撃的な展開です。物語と同じくらい重要なのが、警察のトップが思いのままにふるまえるような全体主義体制の枠組みです。令状なしの拘束、違法な拷問、裁判なしの投獄、判決なしの処刑が可能な世界です。オペラは、歌手トスカと画家マリオの勇気、誠実さ、そして避けられない悲劇を描いており、1950年代のブダペスト、すなわち歌劇場そのものが独裁と個人崇拝の舞台となった時代との完璧な類比が成り立ちます。この新演出の『トスカ』には明確な象徴や歴史上の人物は登場しませんが、あの暗い時代の息苦しい空気ははっきりと感じられます。無実で無害な芸術家たちが、架空のバロン・スカルピアの世界と同様に、命を奪われていったのです。
年齢制限:14歳未満のお子様には推奨されません。
あらすじ
ところ:ローマ市、ローマ共和国
とき:1800年6月14日。マレンゴの戦い当日。当時はナポレオン率いるフランス軍が欧州を席巻していた。
第1幕
逃亡した政治犯アンジェロッティが隠れ家を求めて、親族が礼拝堂を持つ聖アンドレア・デラ・ヴァレ教会にやってくる。ここには妹のアッタヴァンティ侯爵夫人がやってきて兄の解放を祈っていた。その際彼女は気づかなかったが、画家マリオ・カヴァラドッシが教会の注文で描いているマグダラのマリア像のモデルにしていた。 一族の礼拝堂に隠れると、堂守に続いてカヴァラドッシが登場する。堂守は画家が絵筆を洗うのを手伝う。カヴァラドッシは仕事の手を休め、ポケットに持っていたメダルを見つめる。このメダルにはトスカの肖像が描かれており、彼は自分が描く肖像画の青い瞳に金髪のモデルと、黒い瞳に茶色の髪のトスカとを比較して歌う(妙なる調和)。
堂守はカヴァラドッシのアリアの間、絵のモデルが礼拝に来る夫人であることに気づき呆れて、「ふざけるなら俗人にして、聖人は敬ってくれよ」と合いの手で歌い、画家に促されて退場する。カヴァラドッシは一人になるが、物音でアンジェロッティがいることに気づく。彼は旧知の画家と知って隠れ場所から出てきて、サンタンジェロ城(ローマ教皇領の牢獄)から逃げ出してきたことを話す。そこへトスカが外から「マリオ!」と呼ぶので、カヴァラドッシは彼に飲み物を与えて隠れるように言い、アンジェロッティは再び礼拝堂に身を隠す。
トスカはマリオとその夜遅く会う約束をするため来たのだが、ドアの外から聞こえる話し声とカヴァラドッシの落ち着かない態度を見て、嫉妬心から彼が誰か他の女性と密会していたと疑う。カヴァラドッシを別荘でのデートに誘う(緑の中の二人の家にいきましょう)が、彼が描いた女性の顔を見てその疑いは確信に変わる。しかし、マリオの説明を聞いてその場は納得し、肖像画の瞳の色を黒くすることと、夜に会う約束をしてその場を去る。
アンジェロッティが再び現れ、脱出計画を話し合う。カヴァラドッシは彼に自分の別荘の鍵を渡し、アンジェロッティは妹が祭壇に隠していた女性の服を着て脱出するというものだった。その時サンタンジェロ城で砲声が轟き、アンジェロッティの逃亡が発覚したことを告げる。彼は急いで逃げ、画家も同行する。
堂守が大勢の少年合唱隊や待者ともに戻ってくる。彼らはナポレオン軍がマレンゴの戦闘に敗れたという誤報を信じ、神に感謝してテ・デウムを歌う。そこへ警視総監スカルピアが副官スポレッタと部下を従えて登場する。聖堂の礼拝堂で、伯爵夫人の扇と空になった籠を見つけ、疑いを抱く。
彼は疑い深く堂守を尋問すると、カヴァラドッシが礼拝堂の鍵を持っていないこと、彼は食事を摂らないと言っていたことがわかる。そこへ疑い深いトスカが戻ってくる。教会は人で溢れ、枢機卿がテ・デウムの準備をする。スカルピアはトスカの様子を物陰からうかがったあと、彼女に扇を見せて嫉妬心を煽ると、彼女は立腹しその場を去る。スカルピアは部下に彼女のあとをつけるように命じると、トスカに対する恋心を情熱的に歌う。教会ではテ・デウムが始まり、彼もその祈りに和しつつ、目指す男とトスカを二人とも手に入れるのだと歌う。
第2幕
スカルピアが公邸としているファルネーゼ宮殿(現在はフランス大使館として使用)で夕食を摂っている。外では戦勝祝賀会の歌声が聞こえる。彼は部下にトスカをリサイタル終了後にここに呼ぶように命令する。彼は皮肉交じりにトスカを自らの権力で屈服させるのだと歌う。
スポレッタが拘留したカヴァラドッシとともに登場する。アンジェロッティはからくも逃れたのだった。スカルピアは画家を尋問するが白状しない。そこでカヴァラドッシを別室で拷問にかける。そこに入れ替わりにトスカが登場し、スカルピアに恋人の苦痛のうめき声を聞かされると、ついに堪えきれずにアンジェロッティの隠れ場所をしゃべってしまう。画家が部屋から引き戻され、彼女が秘密を漏らしたことを激しくなじる。
そこに伝令が登場し、ナポレオンがマレンゴでオーストリア軍を破ったことを知らせる。動揺するスカルピア達の面前でカヴァラドッシは勝鬨の声を上げ、牢屋に連行される。 後を追おうとするトスカを、スカルピアが呼びとめる。彼女は賄賂で助命を得ようとするが、スカルピアは恋人を自由にする代償として彼女の身体を求める。トスカは絶望し、何故このような過酷な運命を与えたのかと神に助けを求めて祈る(歌に生き、愛に生き)。スポレッタが戻ってきてアンジェロッティが自殺したことを告げ、カヴァラドッシの処遇をたずねる。
トスカが観念したと見たスカルピアは、スポレッタに対しカヴァラドッシの見せかけの処刑を行うよう命令する。パルミエリ伯爵の時と同じだ、と説明するのを意味ありげに聞き、部下は退出する。 トスカはイタリアを出国できるよう、スカルピアに通行証を求める。スカルピアが書類を書いている間、食卓のナイフに気づいたトスカはそれを隠し持つ。書き終えたスカルピアがトスカ、とうとう我が物と迫るところを、トスカはこれがトスカのキッスよといってナイフで胸を刺す。息絶えた彼の手から通行証を奪うと、トスカは信心深く遺体の左右に燭台をおき、十字を切ると遠くの太鼓の音をききつつ去る(彼の前でローマ中が震え上がっていた)。
第3幕
サンタンジェロ城の屋上にある牢屋と処刑場。 冒頭、ホルンのファンファーレに続いて、朝を告げる鐘の音と羊飼いの牧歌が聞こえる。カヴァラドッシは夜明けに行われる処刑を牢屋で待っている。彼は司祭との面会を断り、看守に指輪を与えてトスカに伝言を渡すよう頼む。別れの手紙を書き始めるが、自らの死と恋人との別れを想うと絶望して泣き崩れる(星はきらめき)。
トスカが現れ、驚くカヴァラドッシに通行証を見せ、これまでのいきさつを語る。空砲で見せかけの処刑が行われること、恋人の助命を引き換えに身体を要求したスカルピアを、信心深く虫も殺せぬ彼女が刺し殺したことを聞き、カヴァラドッシは彼女の手をとって「おおやさしい手よ」とトスカの愛情と勇気をたたえる(優しく清らかな手)。時間が迫ったことを告げる彼女にカヴァラドッシは君ゆえに死にたくなかったと語りトスカと互いの愛情を歌う(二重唱新しい希望に魂は勝ち誇って)。
看守がカヴァラドッシに時が来たことを告げる。 トスカに見送られて刑場に赴くカヴァラドッシに彼女はうまく倒れてねと言葉をかけ彼も劇場のトスカのようにと応じる余裕を見せる。
並んだ兵士たちが一斉に発砲し、カヴァラドッシは倒れる。トスカは彼の演技がうまいと一人ほめる。隊長が規則通り剣でとどめを刺すのをスポレッタが制し、一同去る。 兵士たちが去ったのをみてトスカはマリオに近づき、逃げようと声を掛けるが彼は動かない。
処刑は本物であった。スカルピアは最初からカヴァラドッシの命を救うつもりなどなかったのだ。パルミエリ伯爵もそのようにして欺かれたのであろう。 トスカは死んで横たわるカヴァラドッシの傍らでスカルピアの計略を悟り、マリオの名を呼んで泣き叫ぶ。そこにスカルピアが殺されていることを知ったスポレッタが兵士と共に駆け寄り、彼女を殺人罪で逮捕しようとするが、彼女は逃れ、サンタンジェロ城の屋上から身を投げる。
プログラムとキャスト
指揮者:ゲルゲイ・ケッセリャーク
フロリア・トスカ – ズスザンナ・アーダム、ナターリア・トゥズニク
マリオ・カヴァラドッシ – ボルディザール・ラーズロー、サボルチ・ブリックナー
バロン・スカルピア – カーロイ・セメレーディ
チェーザレ・アンジェロッティ – ベンツェ・パタキ
サクリスタン – アンドラーシュ・キッシュ
スポレッタ – アティラ・エルデシュ
シャッローネ – ボルディザール・ザイカーシュ
看守 – ボルディザール・ザイカーシュ
羊飼いの少女 – N. N.
ハンガリー国立歌劇場合唱団、子供合唱団とハンガリー国立歌劇場合奏団出演
演出:ドクター・シルヴェシュター・オコヴァーチ
舞台美術・衣裳デザイン:クリスティナ・リストパード
芸術顧問:アンドラーシュ・アルマーシ=トート
照明デザイン:タマーシュ・ピリンガー
アニメーションデザイン:ジョンボル・チェグレーディ
ハンガリー語翻訳:クララ・ラミ
英語翻訳:アーサー・ロジャー・クレイン
ハンガリー国立歌劇場
ハンガリー国立歌劇場(ハンガリーこくりつかげきじょう、ハンガリー語: Magyar Állami Operaház)は、ハンガリーの首都ブダペストにあるネオルネッサンス建築の歌劇場。
概要
1858年創設。グスタフ・マーラーが音楽監督を務め、黄金時代を築いた。以後、エルネー・ドホナーニやフェレンツ・フリッチャイ、オットー・クレンペラー、ヤーノシュ・フェレンチクらが歴代音楽監督として名を連ね、リヒャルト・シュトラウス、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、ヘルベルト・フォン・カラヤンなどの巨匠達も客演指揮を行っている。
初演された主な作品に、バルトークのバレエ「かかし王子」(1917年)、歌劇「青ひげ公の城」(1918年)や、コダーイの歌劇「ハーリ・ヤーノシュ」(1926年)がある。
歌劇場の専属オーケストラはブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団の名称で知られている。
なお、同じくフリッチャイやフェレンチクが音楽監督であったハンガリー国立交響楽団(現ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団)は、この歌劇場のオーケストラとは別団体である。